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ハニーとポプリ、大切な家族のこと

パピーウォーカー

10年前の12月、何かボランティアをと考えていた時、新聞で盲導犬のパピーウォーカーについて知りました。
2ヶ月の子犬を1年間愛情を持って育てる。訓練はいらない。犬に人の愛情を教えるだけ。僕にも出来そう。

記事の最後にあったアイメイト協会に電話をしてみましたら、希望者が多く順番待ちとのことでした。最後に電話の向こうから「大変ですよ」という声は聞こえましたが、ほとんど気にしませんでした。しかし後になってこんなに大変だったのかと思い知る事になりました。

ドリーのこと

ドリー

1年くらいして、もう忘れかけていた頃アイメイト協会から電話があり、子犬を1年間預かってくれますかとの事、家族は別れるのが辛いからと反対しましたが、大丈夫だよと言って引き受ける事になりました。
1週間後チャイムがなって、2ヶ月半の茶色の雄の子犬が、アイメイト協会のとても優しそうな方につれられて玄関から入ってきました。少しおびえた感じで床に上がるや否や、オシッコをしてしまいました。臆病なこの子が盲導犬になれるのかな?と少し心配になったくらい。可愛いドリーが来た瞬間でした。

先生とドリー

子犬を飼うのはこんなに大変なのかと思いつつ、可愛くて可愛くて楽しい毎日でしたが、半年もすると、もうすぐこの子がいなくなるのを考えるだけで、涙が出てしまう日が始まりました。
実際にその日が来てしまい、お別れをしてドリーは背の高いワンボックスカーの後ろの床につながれ、ドアを閉められたのでもう全く見えなくなってしまいました。車が出発して、もう二度とあの可愛いドリーに会えないと思った瞬間、なんとドリーはワンボックスカーの床から窓まで、思い切りジャンプして窓から自分の全身を見せてくれました。それを見てわれわれの悲しみは頂点に達してしまいました。

ポプリとの出会い、そして別れ

ポプリ

1週間後、アイメイト協会から電話があり、もう一頭預かってもらえませんかとの事、悲しみにうちひしがれていたのでつい、いいですよと返事してしまいました。
1週間後の予定の日、その子は風邪を引いて1週延期になり、その日ドアから入ってきたのは本当に可愛い天使のようなポプリでした。ポプリは堂々とした子で、一階の部屋をゆっくり探索し、おもむろにおしっこをしました。顔に似合わずすごいのが来たな、という印象でした。


ドリー

半年ほどしてアイメイトから電話があり、ドリーが合格して盲導犬になれたと報告がありました。あの臆病なドリーが本当の盲導犬になって、目の不自由な方の役に立てる、また涙涙でした。ドリーはテレビに出たり、外国に行ったり大活躍です。そろそろリタイアなので、色々考えています。

ポプリも訓練が始まる時期になり、また涙の季節。家族からはどうしてこんな悲しみを2回もしなければいけないの、と言われさらに辛く。

ポプリ

帰る2週前になり、ポプリは急に嘔吐しはじめ、薬を飲んでも治りません。我々があまりに悲しむので、犬はそれが分かるんだと気がつき、ポプリに「お前はウチの子ではないんだから、お父さんたちは今からはもう悲しまない。お前の役目は目の不自由な人を助ける事だからがんばりなさい。もしどうしても出来なかったら、帰ってきなさい。そのときは本当のウチの子だから。」といって我慢しました。そうしたら吐かなくなり、とうとう訓練に帰ってしまいました。ポプリは本当に良く言う事をきく子で、「出来なかったら帰ってきなさい」というところも良く聞いていました。

エレガントなレディー、アニー

アニー

また悲しい日々が始まり、あまりに悲しいので、家族には内緒でいろいろな方法で子犬を探しました。パピーウォーカーは2度したのでもう卒業して、自分の犬を家族の一員にしようと決心しました。

伊豆半島の大きなリゾートにその子はいました。Flat Coated Retrieverの焦げ茶の女の子です。ブリーダーさんがアニーと呼んでいたので、名前はアニーにしました。一度も犬の名前を付けた事がありません。最初はおさるさんみたいだったので、モンチッチとからかっていましたが、成長するとエレガントなレディーに変身しました。

アニーとポプリ

アニーとポプリ

アニーが6ヶ月になった頃、アイメイトから電話です。ああポプリも合格したな、と思ったのですが、ポプリはだめなので引き取りますかとのこと。ヤッター!!とはいえず、分かりましたと答え、電話を切りました。ポプリが帰ってくるぞーと家族にいうと、2頭になるね。そうか2頭か。うん、2頭でいい!!

8月30日ポプリの2歳の誕生日当日アイメイトまで迎えにいきました。これポプリですか?と聞いたくらい顔つきが変わっていました。しかし僕を見ると、いつもどおり口を舐め始めました。帰りの車の中でポプリはとてもうれしそうにしていました。

家について表でアニーに会わせましたら、アニーはうれしくてポプリをぺろぺろ舐めていましたが、ポプリは急に後ずさりして、この子は誰という感じでいます。あっと思い、ポプリこっちへおいでと言いましたが、もう来ません。「やっと帰ってきたのに、どうして!!」ポプリは他の子がいる事に耐えられなかったのです。

ポプリを抱きしめ、「おまえがいなくなって、お父さんたちは耐えられなくてこの子が来たんだよ。とてもいい子だよ。妹だよ。」と何度も言い聞かせました。

アニーとポプリ

それからは何をするにもポプリ優先。アニーは大らかな性格でポプリ大好き。いつもポプリについていきます。ポプリはうっとうしいようですが、少しずつ慣れていきました。
半年ほどしてやっと元の顔つきに戻りました。7年間本当に楽しい時期が続きました。どこへ行くのも皆一緒です。

ところが昨年の秋アニーは病気になり、大きな手術をしたりしましたが、残念ながら3月11日に死んでしまいました。美人薄命といいますが、美しくエレガントで優しくお利口で、ほとんど病気知らずのアニーが……………………。
この話は止めます。寿命の半分しか生きられませんでしたが、我々にくれた喜びは最高でした。アニーに感謝感謝!!
毎月11日頃にはアニーのお墓参りに皆で行って、アニーの思い出に浸っています。

そして、ハニーのこと

ハニー

アニーがいなくなった心の空洞は何も埋められません。仕方ないのでもう一頭です。名前はハニー、アニーに似せて。

焦げ茶色のスタンダードプードルの雌を世界中探して…オーストラリアにいました。6月に生まれるとの事、焦げ茶のメスの確率は30%位。予約をして待つ事3ヶ月、3頭のお母さんから生まれた32頭に焦げ茶のメスは、一頭もなし。他の国にもなし。ああ!アニーが同じ色を嫌がっている。何色でもいい!日本にいた、クリーム色のメス。

ポプリとハニー

8月21日ハニーが三重県から来ました。名古屋駅でブリーダーから受け取り、ボストンバッグに入れて新幹線で帰ってきました。その間、いやがらず大人しくしていましたので、すごくおりこうさんかと思いましたが、家につくと早速ポプリの頭や足を咬んで、遊ぼう遊ぼうが始まりました。子犬を育てるのは7年ぶり、こんなに大変だったとは。毎日戦争のようです。

犬を飼うのは本当に楽しい。楽しい事ばかりではなく、おしっこやウンチの世話、ブラッシング、歯磨き、耳掃除、散歩、病気の看病、別れなどつらいことや面倒な事もたくさんあります。いなくなると本当に辛い、半端じゃなく辛い。でもいろいろな事すべて含めて犬を飼う事はすばらしい事だと、僕は思います。

最後に、ドリーのその後について

アイメイト協会では盲導犬がリタイアした後、犬を引き取って育てるボランティアの方に飼育をお願いするか、パピーウォーカーに戻して育ててもらうかだと思っていましたが、(最近知った事なのですが)犬の所有権は使用者にあるため、その後の事は使用者が決めるようです。

僕たちはあのドリーと又一緒に居たいし、彼がどこか知らないところへ行くのは、可愛そうだと思いリタイアしたら引き取りますとお願いしていましたが、彼にとって一番良いのはいつまでも使用者の方と一緒にいる事です。僕たちは寂しいですが、リタイアした後は会えるそうなので新たな盲導犬を迎えて、その方がドリーを飼えない場合以外はあきらめる覚悟です。早くドリーに会いたい。あと一年がんばれ!!!

ドリーが帰ってきました

約十年間の盲導犬の仕事を終え、ドリーが帰ってきました。
使用者の方から電話があり、リタイアするので引き取りますかとのこと。
分かりましたと答え、先ず会いに行きました。
ドリーはすっかり大人になり、その家族の一員になりきっていました。ドリーが仕事を始めた頃、テレビの取材を受けテレビに出演したのをアイメイト協会から知らせて頂き、その際使用者の方の連絡先を教えて頂きました。ドリーの様子を季節毎に教えて頂いたり、お誕生日のプレゼントを贈ったりしていましたので、すごく身近な感じでいました。これまでのいろいろなお話を伺い、ドリーは本当に幸せに過ごしてきたのがよくわかりました。雨の日や暑い日には、駅のタクシー乗り場に直行するそうです。また沖縄や海外にも飛行機で出かけ、よくファーストクラスに乗せてもらったそうです。柔道をなさる方で柔道着を着せてもらって道場に入ったこともあるようです。楽しく仕事をしたんだねと言うと、ドリーはぺろっと僕の鼻をなめました。
ポプリは12歳、ドリーは13歳、ハニーは3歳。帰り道ずっと皆のことを考えていました。アニーを失ったときのことを考えると大切なポプリとドリーを一緒に見て行く事に自信が揺らいでしまいました。家に帰って隣の方にドリーが帰ってきますよと話して、不安についても話すと隣の方はドリーちゃんはウチに住んでもいいよと言ってくれました。という訳でドリーは隣の家に住む事になりました。
ドリーは帰ってきたその日から隣の方にスッカリなつき(何という適応力)、僕らとも毎日楽しく遊んでいます。願いが叶いこれでドリーも一緒になれました。めでたし、めでたし。

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